ドクターズトーク

  1. 口臭・・気になりませんか? まず、歯・舌の上の清掃徹底を!
  2. タバコの影響……歯周病の大きな危険因子!
  3. 「電動歯ブラシ」は良いでしょうか?
  4. 「顎関節症」とはどんな病気でしょうか?
  5. 歯の神経は、取らない方が良いのですか?
  6. 神経を取った歯が悪くなることがありますか?
  7. インプラント治療とはどんなものでしょうか?
  8. 唾液のはたらき……唾液は、口の中のオアシス

1. 口臭・・気になりませんか? まず、歯・舌の上の清掃徹底を!

口臭はだれにでもあるものです。そんなに神経をとがらせる必要はありません。
口臭の原因は硫化水素やメチルメルカプタンという、揮発性硫化物質が主なものです。

口臭は(A)だれでもが持っているにおいで、朝起きた時・緊張した時に感じる口臭や、老人性口臭などの生理的口臭(B)他人は感じていないのに、自分自身が感じて 悩む心因性口臭(自臭症)(C)アルコール臭やニンニク臭など飲食による口臭 (D)病気が原因の病的口臭-の四つに分類されます。

(A)と(B)は、口の中を清潔にするよう心がければ、気にする必要はなく、(C)は消化吸収され血中に溶けたものが、肺を経由して呼気に混じって出てくるもので、時間が経過して血中濃度が低下すると解決します。最後の(D)だけが 真の口臭といえる、というのが歯科医学界の見解です。

病的口臭は、歯周病や虫歯、口内炎が原因で起きることが圧倒的に多く、特に中程度、重度の歯周病は、明らかな口臭の原因と断定されています。

口臭をなくすには、定期的に歯科医院で口の中をチェックしてもらい、原因を元から断つ治療が必要です。歯周疾患の場合は、正しいブラッシングの指導を受け、歯石を取り除くプラークコントロールをすれば、病的口臭はなくなります。当医院にも簡単な口臭チェッカーがあります。

抜けた歯をそのまま放置していたり、合わない入れ歯をしていたりするのもよくありません。

意外に見落とされがちなのが、舌の表面に付着する汚れ、舌苔(ぜったい)です。
多重の舌苔の沈着は、歯周疾患と並び、口臭の二大要因と言われています。
舌苔は歯磨きをする際に、舌を歯ブラシでブラッシングすれば取れます。取れない汚れは、他の病気から起きていることが考えられます。

結局、胃の内容物が口臭の原因ではなく、プラーク(歯垢)および舌苔が主な原因です。さらに、肝臓病、糖尿病、尿毒症、舌がんなどの病気の場合にも口臭があります。
いつも清潔なお口を心がけましょう。

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2. タバコの影響……歯周病の大きな危険因子!

タバコを吸う人は吸わない人に比べて歯周病には2~9倍も歯周病にかかりやすく、歯の寿命も約 10年短くなるといわれています。タバコの煙には4,000種以上の化学物質が含まれており、そのうち有害であることが分かっている物質は200種を越えています。

この中でも含有量と毒性の強さからみて、タール、一酸化炭素、ニコチンが三大有害物質といわれています。 タバコを直接吸い込む口の中は、口内炎(こうないえん)や、口腔・舌にできる癌、声帯にできるポリープ、歯肉炎(しにくえん)など、さまざまな害が現れます。特に煙が当たる部分の歯肉は炎症を起こして腫(は)れ、濁った暗い紫色になり、血流障害を生じ、歯肉がやせていきます。

タバコは歯周病の大きな危険因子の一つです。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、歯周組織の傷をなおす能力を妨げる作用があります。

困ったことに、歯肉が炎症を起こしても出血が抑えられて出血が隠されてしまいますし、歯肉がかたくゴツゴツになった患者さんの場合には、歯周病が進行していても表面的に歯肉の炎症があまりあらわれず見かけ上軽い様に見え、発見が遅れる原因になっています。

重症の場合は歯を支える骨が溶け、歯が抜けてしまうこともあります。また、二コチンは、免疫系に作用して、体の抵抗力を低下させます。白血球が異物を処理する能力にも影響を与えます。

歯の裏についたタールは、歯垢(しこう)を接着させる接着剤の役割をします。親がタバコを吸っていると、受動喫煙で子供の歯肉まで黒くなってしまうこともあります。また、当りまえのことですが、喫煙者は独特の口臭(こうしゅう)がします。

若い年齢で発症し、進行が早く、患者さんがブラッシングなどのコントロールに励んだりいったん歯周治療をしても治りにくい場合も多く、再発しやすくなります。禁煙は非常に有効な歯周病の治療法です。

タバコをよく吸う方は、早めに歯医者さんに相談し、少しでも快適に過ごせるよう治療を受けましょう。

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3. 「電動歯ブラシ」は良いでしょうか?

歯ブラシは、①歯質そのものに対して清掃するのか(虫歯の予防)、②歯肉や歯周に対して清掃するのか(歯周病の予防)、の、どちらを重点的に行なうのかで、種類・形態・大きさ・方法が変わって きます。

歯や歯肉の平滑な面や ゆるやかな局面は、何もしなくても、唾液による自浄作用で、知らないうちに歯垢などが洗い流されます。問題は、くぼんだところや奥まったところ(歯の溝・歯と歯の間・歯と歯肉の境)です。その場所に電動歯ブラシ の毛先は入りこむでしょうか。

「電動歯ブラシ」の使用後、プラークテスター(歯垢染め出し液)を使ってチェックしてみると、磨きやすい前歯はきれいになっていても、奥歯や歯と歯の間に磨き残しがある場合が多く見られるようです。自分では磨いたつもりでも、歯垢が残ることが多いようです。これでは手で磨いても同じか、あるいは使っている安心感だけで、逆効果になる恐れもあります。

「電動歯ブラシ」の毛先の動き方には、回転運動・前後運動・左右運動・扇形運動・微振動などがあるようですが、回転や振動によって規制されながらつくられる面は、きっと平面に近いと思います。その場所を1分間に何千回転かでこすり続けることになります。高速回転・音波振動・超振動・防水性コードレスなど、いろいろ工夫もなされているようですが・・・・・。毎回 毛先の種類を変えることも面倒だと思います。

「電動歯ブラシ」は多くの長所を持っており、「気持ち良いや!」「簡単に磨ければ充分だ!」 と言うのであれば、存在価値は大いにあります。 手首が疲れず、心地良いです。しかし、その場合は、できるだけ自分の歯や歯列や予防目的にあった種類を慎重に選ぶことが大切です。

自分の手指で「普通の歯ブラシ」を使う方法には、① ブラシの選択が自由、② 方向も角度も圧力も変えられる、③ 動かす範囲も自分の手首の動きと指の感触で変えやすい、④ 安価、などの長所があり、疲労や面倒くささを省けば、万能です。
わたしたちが日頃行なう”洗車”に置き換えて考えてみましょう。

① 洗剤がついていない自動洗車器の毛ブラシで車体の広い平面をこすって洗うことと、② 考えながら手指でバンパーやホイール周りやミラーの後ろまでていねいに磨くこと、の違いだと思います。

わたしは、① 手の不自由な方や老人、② 病気で手指が麻痺して動きが悪くなった方や、③ 事故やスポーツ傷害で手首が痛くなった方 には 電動歯ブラシをすすめます。しかし普通の健康な方の場合、「手指による普通のブラッシングの方法を充分行なった上で、補助的に電動歯ブラシを使うことは有効だ!」と考えております。電動歯ブラシを過信して、それだけに頼らないでください!

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4. 「顎関節症」とはどんな病気でしょうか?

「顎関節症」は、大きな症状の名前です。
①口を開くときに顎の関節が痛くなった ②大きく口を開けられない ③寝ていて朝起きたときに顎が疲れている ④口を開くたびに音がする ⑤歯がうまくかみ合わないので食べにくい ⑥肩こりや頭痛がかみ合わせに関係していると思われる ⑦顎のあたりの筋肉を抑えると痛む などが顎関節の症状です。

そして、もとの原因としては
① 今までに、明らかに外力が加わった場合 ②毎日の不自然な姿勢がひきおこした場合 ③歯列が乱れていて悪い場合 ④歯をくいしばっていることが多い場合 ⑤寝ている間、”歯ぎしり”の習慣が強い場合 ⑥精神的な問題で起こった場合 ⑦知らない間になってしまった場合 などがあります。

歯のかみ合わせが原因でおこった場合は、わたしの医院で対処できるかもしれません。かみ合わせる時、あたってはいけない歯の部分が存在し、かみ合わせの邪魔をしつづけることは非常に多くあります。このような場合、歯の高さや形態を修正することによって改善させることができます。これで良くなる方も多く、喜ばれております。通院回数は2~4回、期間は1~3月です。健康保険証を利用できます。

この方法で治らない場合、マウスピース(スプリント)を作製します。入れ歯に似た透明のものを、一日中または寝ている間、上か下のどちらかの歯列の上にはめる方法です。これも健康保険証が利用できます。

その他、薬を飲んでいただく場合などもあります。
症状が軽い方の場合は、治ったかどうかの確認がしにくく、難しいです。次の場合は、すぐに他の専門病院を紹介させていただきます。

① かみ合わせが原因となっていない場合 ②病気が重すぎてわたしの医院内で対応できない場合 ③かみ合わせが原因ではない場合などです。

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5. 歯の神経は、取らない方が良いのですか?


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むし歯が進行すると、歯の神経に炎症をおこして強くしみたり、ズキズキ痛みだしたりします。このような時、やむをえず神経を取ることになります。
一般の人が「神経」と言っているのは、専門用語では「歯髄(しずい)」と呼び、結合組織です。この中に血管(動脈・静脈)と神経が存在しているものなのです。そして周りはやや堅い「象牙質」で囲まれています。

「歯の神経を取る(抜く)」処置のことを、「抜髄(ばつずい)」といいます。
ここでは、「歯髄(しずい)」と言わずに、いちおう「神経」という言葉で説明しましょう。

「神経を取る」ということは、神経のみならず歯への栄養供給をつかさどる血管も取ってしまうのです。抜髄した歯は、木でいえば枯れ木です.多くの歯質が失われていますし、栄養分が行き届かないので水分が少なくなり、もろくなり歯が割れやすくなります。そのため部分的に詰めただけでは割れやすく、かぶせることになります。また、変色もします。

脳から歯根の先までは長い神経が続いており……このために歯からの感覚を感じるわけですが……、「神経を取る」といっても歯の中の神経だけを除去することであり、残りの脳の側の神経は残すことになります。 小さな処置とはいえ、歯の周りの組織にとっては大きなダメージを受ける手術です。当然その切断面付近には手術特有の炎症が起こることになり、一時的でも痛みが残ることになります。

神経を取ったあとは、入っていた空洞をきれいに拡大清掃して、完全に薬剤で封鎖する必要がありますが、これは非常にむずかしい処置です。神経は1本や2本だけではなく、歯によっては3本・4本入っているものもあり、そのうえ、根の先の部分は複雑に「分岐」つまり「枝分かれ」しています。このような複雑な部分を歯科医はレントゲン写真と手指の感覚で治療しています。

特に小学生時代の生えて間もない歯は、頭の部分は完成していても根の部分は未完成の歯もあり、抜髄すると予後経過が悪く、治療も困難です。ですから、できれば「抜髄」はしたくないものです。やむをえない場合は、もちろん「抜髄」をします。

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6. 神経を取った歯が悪くなることがありますか?


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抜髄をした歯の将来的な障害ですが、神経を取っていない健康な歯と比較すると、 ① もろくなって歯が割れやすくなる。 ② 長年の間には、歯質の色が黄色や黒ずむことがある。

確実な閉鎖が困難であるために、テクニカルエラーがなくても、下記のことが起こりがちです。つまり、
①組織が若くなかったり、抵抗力が弱い場合、何ヶ月もしてから根の先に炎症を起こしてくることがある。
② かみ合わせの負担が大きい状態が続くと、その影響を受けやすく、同様のことになる。
③ 詰めたりかぶせてある歯であるため唾液による自浄作用がうまくいかず、清掃状態も悪くなりがちで、歯を支えている組織に歯周病が進行する可能性が高くなる。

具合の悪いことに、自覚症状がない場合もあるので、他の歯の治療を受けてたまたま 発見されるまで本人が気がつかないことも多いです。 何の前ぶれもなく急に腫れたり痛くなったりすることもありますが、多くの場合に は、肩がこると歯が浮いたようになるという症状が最初に見られます。

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7. インプラント治療とはどんなものでしょうか?


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歯の「インプラント」とは、セラミックやチタンや金属などでつくられる人工の歯根を、歯の失われた部位のあごの骨の中に穴を開けて植え込み、その上に人工歯を取り付ける方法を言います。人工歯を土台ごと形成する方法です。

このため外見も天然の歯のように見え、自分の歯でかむような感覚が得られます。
歯列の欠落が一部でも、全部でもできます。取りはずしをする吸着式の大きな入れ歯は、手術せず手入れも楽ですが、異物感が大きくて不快です。また両隣の歯でつなぐブリッジ治療は、支える歯が丈夫なことが不可欠で、それを削らなくてはなりません。それに対しインプラントは理想のように思えます。しかし特殊技術を使った手術が必要で、それに伴うトラブルもあります。

口の中というきわめて不潔な部位に露出させたインプラントには、食事をとるたびに強大な咀嚼力が加わります。天然の歯は歯根膜がクッションの役割を果たしていますが、人工歯根には多様な力に対応できる働きがありません。そして歯茎や骨と接続している部分が不潔になると、天然の歯のような生体防御反応が働かないために、その周囲からの細菌感染による急性炎症を起こす危険性が、高い確率で常に存在します。感染が広がると痛みも増しグラグラになって、ついにはインプラントが外れてしまいます。ですから、毎日丁寧な歯磨きができない人にはインプラントは無理です。「インプラントにしたので大丈夫」ではなく、患者さん自身による確実なブラッシングと定期検診が必要です。

強大な咀嚼力により、インプラント自体の破折や動揺などが発生する危険もありま す。インプラントをすべきか基準は多少あいまいです。誰にでも適応できる訳ではありません。

  1. 上あごの奥歯の部分は、副鼻腔(ふくびくう)があり、骨が非常に薄いので、手術がむずかしいです。
  2. また、下あごには下顎管(かがくかん)という、下歯槽神経(下顎神経)や血管の通る穴が通っていますので、下唇やその周辺部の知覚マヒを残さないように、その部を避けなければなりません。
  3. 歯を抜いてから長期間たって、すでにあごの骨がやせ細っていると、インプラントを植え込むことはできません。骨量が不足したり、かみ合わせ状態が悪かったため、不適応となることもたくさんあります。
  4. また糖尿病やじん臓病など全身疾患を持つ人は、より注意が必要です。
  5. もちろん、あごの成長が続く子供にはできません。

人工歯根が骨と十分に接着したことを確認した後、上部構造と呼ばれる歯冠部をその人工歯根にかぶせて接続する方法のため、治療期間は1年以上かかり、虫歯や歯周病があれば、もっと長くなります。インプラントは、必ずしも一生あるいは半永久的にもつわけではありません。決して永久歯ではありません。 全く健康保険の効かない自費診療で、費用は高額になります。

このように、歯科医師による検査・診断によって適応できるかどうか判断され、技術的にむずかしい面が多くあります。高度な専門技術を要する治療だけに、通常の治療法ではうまくいかない場合に限るのが良いでしょう。わたしの医院では、インプラント治療を行なっておりません。多くの経験を積んだ信頼できる歯科医師を選び、術前に十分な説明を受け、納得してから始められることをお勧めします。

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8. 唾液のはたらき……唾液は、口の中のオアシス

わたし達は「唾液」のことを簡単に「つば」と言って、日常生活ではあまりその役目をしんけんに考えることはありません。邪魔者扱いにすることさえあります。でも、唾液は大変に重要なものなのです。

私たちが1日に分泌する唾液の総量は1~1.5 リットルといわれています。この量は、1日の尿の量にも匹敵します。唾液は食事の刺激により多量に分泌されていますが、とくに刺激がないときでも、たえず分泌されています。わたし達の唾液は何のために出ているのでしょうか。唾液が持っている作用を詳しく調べてみると、大きく分けて、消化液としての作用と、口の中の環境を維持する作用の二つがあります。

  1. 唾液のもっとも基本的な作用は、唾液の中に含まれているアミラーゼという酵素でデンプンをマルト―ス(麦芽糖)に加水分解する消化作用です。ですから御飯をよく噛むと甘く感じます。しかし、早食いの人は、デンプンの消化が十分に行われません。
  2. また、唾液は常に新しいものと入れ替わりながら口の中の状態をできるだけ一定に保とうとしています。食事などの時に顎の動きが活発になると、その刺激によって唾液がたくさん分泌され食べ物のかすを洗い流す作用をしますが、寝ている時には逆に刺激が少なくあまり唾液が分泌されないので、それができません。ですから、むし歯や歯周病の原因となる歯垢(しこう)(プラーク)が特定の場所に溜まりやすく、病気の進行が早くなります。つまり、寝る前には必ず歯を磨いた方がよいということです。
  3. さらに、唾液中の糖タンパク質(ムチンなど)は歯のエナメル質と結びつき、その表面に被膜をつくってエナメル質の表面からカルシウムやリンが溶け出すのを防ぎむし歯を防ぐ作用をしります。
  4. 粘膜を保護する作用
  5. 摩擦を少なく粘膜表面をなめらかにして嚥下や発音や会話を円滑にする作用
  6. 味物質を溶解し味覚を促進させる作用
  7. pHを一定に保ち細菌の増殖を抑えたり直接殺菌する作用
  8. 唾液腺ホルモンであるパロチンを分泌して骨や歯の発育を促進し老化抑止に硬化 を発揮する作用
    などがあります。

ある程度高齢になると、唾液の成分に粘り気が増してくることもわかっています。また歯の欠損や義歯の不適合は咀嚼障害を起こし、ひいては、唾液の分泌を減らします。薬の服用(降圧剤・鎮痛剤・精神安定剤・骨粗しょう症治療薬など)や緊張・ストレスなどによって、唾液の分泌が減少してしまうこともあります。唾液の分泌がが少なくなってお口がカラカラに乾燥し困っていらっしゃる方をときどき見かけます。唾液をたくさん分泌するには、より多くかむことと、味覚刺激を与えることが効果的です。……「唾液の科学」より

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